一部で流行っている、ミラーレス一眼を Webカメラ化してテレワークを快適にするのを真似したくなったので、環境を整えてみた。
はじめに
ミラーレスカメラを Webカメラ化するのに必要なものは以下です。私の場合は「1.」と「3.」は持ってるので、今回新規に準備したのは「2.」の HDMI キャプチャー機器のみです。
- ミラーレスカメラ(HDMI出力が出来るもの)
- HDMI キャプチャー機器
- パソコン(Windows or Mac)
一般的なミラーレスカメラは映像出力を HDMI 端子からしかできないので今回の方法が必要ですが、一部メーカーについては、USBケーブルで接続するだけでパソコン側からは Webカメラとして認識するので今回紹介している手順は不要です。
SIGMA fp
SIGMA fp は標準で USB接続に対応しているようです。
Canon の一眼レフ/ミラーレス
Canon はもともとは対応してなかったんだけど、一眼レフとミラーレスを USB接続だけで Webカメラとして使えるツールをリリース(2020/04/29)するという神対応。羨ましすぎる。ただし、現状では Windows 専用みたいで Mac には対応してないようです。
Fujifilm の Webcam 対応
2020年05月27日追記
富士フイルムからも USB接続だけで Webカメラ化出来るツール(FUJIFILM X Webcam)がリリースされました!!!(ただし、USBテザー撮影が出来る機種に限定されてます。)
以前、X-T3 を Webカメラ化するエントリーを書いたけど、ななななななんと富士フイルムからも Canon と同様に USB接続だけで Webカメラとして認識できるツールをリリースするという神対応!!!https://[…]
各社の Webカメラ化のソフトについてですが、基本的には 1280×720px/30fps までの対応のようです。今回紹介する方法はカメラからの HDMI 出力をキャプチャするため、Webカメラ化ソフトよりも高画質の 1080p や 4K にも対応させることが出来ます。
X-T3 は HDMI で 4K の出力ができるけど、今回選択したキャプチャーカードは 1920×1080px/60fps までの対応のものです。
少しでも高画質にしたい人は FUJIFILM X Webcam は使用せずに、今回紹介するキャプチャーボードの方法がオススメです。
動作対象アプリ
今回紹介する方法で動作確認を行ったアプリは以下です。
- Zoom
- Skype デスクトップ版
- LINE デスクトップ版
- Cisco Webex Meetings
以下のアプリはカメラとして認識しませんでした。
- Skype ストアアプリ版
カメラとして認識出来ない原因ですが、推測となりますが、以下に該当していると考えられます。
https://support.microsoft.com/ja-jp/help/2998316/windows-7-webcam-does-not-work-in-windows-store-apps-in-windows-8-or-a
HDMI キャプチャーカード
最近の主流はノートパソコンとかでも使える USBケーブルで接続するタイプだけど、需要が高すぎて在庫がなかったのと、私の場合は自宅でしか使わないし、HWエンコーダーを搭載してるのでキャプチャー中も CPU に負荷がかからないのが利点かなと思い、デスクトップ内蔵型の HD60 Pro にしました。
主な特徴は以下のとおり。
- フルHD(1080p/60fps)までのキャプチャが可能
- H.264 ハードウェアエンコーダー搭載
- インスタントゲームビュー機能搭載で表示遅延が小さい
- PCI Express x 1 接続
ちなみに Elgato からは以下の6製品が発売されてます。
項目 | HD60 S | HD 60 S+ | 4K60 S+ | HD60 Pro | 4K60 Pro | CAM LINK 4K |
1080p/60fps | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
2160p/60fps | - | - | ◎ | - | ◎ | ◎(30fps) |
HDR10 | - | ◎ | ◎ | - | ◎ | - |
接続 | USB 3.0 | USB 3.0 | USB 3.0/SD | PCIe x1 | PCIe x4 | USB 3.0 |
HW エンコーダ | - | - | HEVC/H.264 | H.264 | - | - |
パススルー | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | - |
低遅延 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
最大ビットレート | 40 Mbps | 60 Mbps | 140 Mbps | 60 Mbps | 140 Mbps | 記載なし |
UVC (USB Video Class) | - | - | - | - | - | ◎ |
利用するソフトウェアによっては、UVC に対応していないとカメラとして利用出来ないので注意が必要です。そのため、ミラーレスカメラの Webカメラ化だけなら「CAM LINK 4K」が最適だと思うけど、人気がありすぎてどこも在庫がない。。
外観
ハーフブラケットも付属されてました。ただ、今どき、ハーフブラケットのデスクトップってあるんだろうか。。
HDMI ケーブルも付属。両端ともフルサイズでした。
見た目はカッコいい。ただ、内蔵しちゃうと見えないからどうでもいいけど笑
インターフェースは入力1系統、出力1系統。
今回の使い方では使わないけど、ゲームプレイとかを PC でキャプチャしつつ、実際の映像はテレビの大画面でしたいときには出力から HDMI ケーブルでテレビに繋ぐやり方になる。
PC へインストール
デスクトップ PC の PCI Express スロットに設置して OS を起動すると、ドライバとかの追加無くデバイスマネージャーで正常に認識してました。
ソフトウェアは Elgato の Webサイト(https://www.elgato.com/ja/gaming/downloads)からダウンロードします。ただし、Webカメラ化だけであればソフトウェアの導入は不要で、Zoom や Skype 等で HD60 Pro が認識できる状態になります。
ソフトウェアに関しては、HDMI からキャプチャした映像をファイルに保存したい場合などに利用します。
ミラーレスカメラ(X-T3)の準備
HDMI ケーブル/USB-Cケーブルの接続
X-T3 の HDMI 端子は Micro タイプで Elgato 側はフルサイズなので適合した HDMI ケーブルを準備します。今回はこの 3m タイプを選んでみました。選ぶポイントとしては、X-T3 側となる Micro HDMI 端子のコネクタが小さいものを選びました。(このあと記載する USB-C ケーブルと干渉させないため)
利用が長時間になってもいいように内蔵バッテリーだけではなく、USB-C ケーブルで給電しながら使えるようにします。
このケーブルの組み合わせであれば X-T3 で干渉することはありませんでした。
ちなみに内蔵バッテリーだけで駆動させた場合を計測してみましたが 約1時間45分 使えました。なので、ちょっとだけ使うとかなら内蔵バッテリーだけでもなんとかなるけど使用頻度が高いと充電も面倒なので USB-C ケーブルで給電しておくと便利。
USB-C での給電が使えない場合には、DCカプラーを付けると電源の心配はいらない。
HDMI 切替器
今回の Webカメラ化だけでは不要だけど、他の HDMI 機器もキャプチャーしたいなと思っていたのでついでに HDMI 切替器も購入してみました。あまり深く考えずに、ちょうど Amazon でタイムセールをやっていたこれを買ってみた。タイムセール時は 2,580円でした。
入力が3系統で出力が1系統です。切替は本体のボタンでも出来るけどリモコンも付いてるのでなかなか便利。
内容物としては以下でした。
- HDMI切替器 本体
- リモコン
- 電源供給用 USB ケーブル
- リモコン受光部用ケーブル
X-T3 の設定
X-T3 は 4K の出力が出来るけど、今回購入した HDMI キャプチャカードはフルHD までの対応なので動画モードを フルHD に設定します。
「動画メニュー」→「動画モード」→「FHD 16:9 / 29.97P」を選択
AFモードは「動画メニュー」→「動画AFモード」→「オートエリア」
瞳AF も有効に。「動画メニュー」→「顔検出/瞳AF設定」→「顔検出ON」
HDMI出力時は無操作状態になるので、デフォルト設定だとスタンバイになっちゃうので、自動電源OFF を無効化する必要があります。
「設定メニュー」→「消費電力設定」→「自動電源OFF」→「OFF」に設定。
色の設定は好みだけど、人を写す時は ASTIA が好きなので今回は ASTIA に。あとちょっとだけパラメータをカスタマイズして肌の感じとかをいい感じに。(撮って出しの色がいい富士フイルムの利点)
- フィルムシミュレーション: ASTIA
- ハイライトトーン : -1
- シャドートーン : -2
- カラー : -1
レンズの選択
モニターの位置に置くので基本的には広角レンズが必要になるけど、手持ちのレンズの中から以下のレンズを試して見ました。
レンズ名 | 感想 |
XF16mm F1.4 R WR | ・解放F値も明るくて写りもいいけど、広角過ぎて部屋の中の余計な物が写っちゃう。。 ・AF-C にしていると、ちょっとだけ AF駆動音がする。まぁ許容範囲。 |
XF18mmF2 R | ・写りもよくて画角もちょうどいい。 ・AF-C にすると AF 駆動音が激しすぎて、ノイズも気になるし長時間使ってるとレンズが壊れるんじゃないと思うくらい不安になる。 |
XF16-55mmF2.8 R LM WR | ・写りも画角もちょうどいい。 ・AF-C でも AF駆動音はしないし、AF 追従も高速。 ・モニターの横にあるとレンズがでか過ぎて圧迫感が凄い |
XF10-24mmF4 R OIS | ・写りが平凡だし、開放F値が暗いので ISO が高めにする必要がある。 ・AF-C でも AF駆動音はしないし、AF 追従も快適。 ・XF16-55mm に比べたらマシだけど、やっぱり圧迫感がある。 |
XF18-55mm F2.8-4.0 R LM OIS | ・20~30mmくらいの焦点距離であれば解放F値は F3.2 なのでそこそこ使える。 ・AF-C でも AF駆動音はしないし、AF 追従も快適 ・XF16-55mm、XF10-24mm に比べると圧迫感は少ない。 |
今回試してみて改めて思ったけど、富士フイルムって本体側は動画を売りにすることは多いけど、レンズが動画向きの造りをしてないよね。。 特に単焦点の F1.4シリーズは AF-C への対応が終わってる気がするので、そろそろ第2世代へ更新した方がいいと思う。
で、最終的な選択としては XF18-55mm にしました。AF-C で瞳AF を On にしてても X-T3 の AF 性能であれば快適に使える。あとサイズもそんなに大きくないのであり。というか XF18-55mm ってやっぱり優等生なんだよなー
XF18-55mm 以外では XF18mm F2 がいい感じ。ただ、XF18mm F2 の場合には AF-C は使い物にならないので AF-S が前提になるので、顔の位置を変える場合には AF をやり直す必要がある。
大きさが気にならないなら大三元の XF16-55mm が開放 F 値も明るいし画質もいいし、AF 速度も早いのでオススメ。
マイク&ヘッドフォンの準備
デスクトップPC はマイクが付いてないので別途準備する必要があります。私の場合は、元々動画撮影用に RODE の VideoMicro を持っていたので流用してみました。ヘッドホンも昔から使っている物があったので流用。
ただ、このマイクを使う時には注意が必要。RODE VideoMicro(コンデンサーマイク)は 3.5mmジャックが採用されてるので PC のマザーボードについているマイク端子に挿せば使えることは使えるんだけど、入力レベルが小さすぎて「マイク ブースト」で 20~30dB 上げる必要があるんだけど、ブーストするとノイズが酷いことに。。
コンデンサーマイクを使う場合には、正統派で行くとオーディオインターフェースを導入するといいんだけど安くても1万円程度はするので流石にテレワークの為だけに購入するのは嫌だなと・・・
このマイクを X-T3 のマイク端子に接続して使う時は凄く音質はいいので、X-T3 のマイク端子 → HDMI出力 → HDMI キャプチャカード → zoom とか Skype とかのツールでマイク入力として使えればいいのになと思ったけど標準の機能だと使うことは出来なかったけど、以下のツールを組み合わせることで使うことが出来たので紹介。
必要なツールは以下の3点です。
- OBS Studio(Open Broadcaster Software)
- OBS-VirtualCam(OBSのプラグイン)
- VB-CABLE Virtual Audio Device.(仮想オーディオデバイス)
OBS は Youtube とかで配信する人とかには有名なツールですが、このツールの一部機能を使います。OBS と OBS のプラグインはインストールするだけなので以下からダウンロードし、インストールします。
OBS (Open Broadcaster Software) is free and open source soft…
obs-studio plugin to simulate a directshow webcam. Contribut…
OBS-VirtualCam の必要性だけど X-T3 の HDMI 映像を OBS に取り込んでしまうと他のツールでは映像が使えなくなるので、OBS に取り込んだ映像を仮想Webカメラとして映像を出力することで ZOOM とか Skype などのツールのカメラとして使うことが出来るようになります。
OBS-VirtualCam をインストールすると OBS の「ツール」→「VirtualCam」で設定が出来ます。
ただ、大した設定はなくて、OBS の起動と同時に VirtualCam が動くように「AutoStart」にチェックを入れるだけ。
ZOOM などのツールでカメラとして選択が出来るようになります。
肝心な X-T3 のマイク端子に接続している音声の取り込み方法については、まずは VB-CABLE Virtual Audio Device. のインストールをしておきます。
VB-Audio Virtual Cable and App's…
インストールすると「コントロールパネル」→「サウンド」→「録音」に「CABLE Output」が表示されていることを確認します。
OBS Studio の「ソース」から「追加」→「映像キャプチャデバイス」を選択。
任意の名前を付けて「OK」をクリック。
デバイスのところで「Game Capture HD60 Pro」を選んで「OK」をクリック。
「音声ミキサー」に追加されます。
「ファイル」→「設定」をクリック。
「音声」→「詳細設定」→「モニタリングデバイス」で「CABLE Input (VB-Audio Virtual Cable)」を選択。
「編集」→「オーディオの詳細プロパティ」をクリック。
HD60 Pro の「音声モニタリング」の項目を「モニターと出力」を選択。
これで、出力が出来ている状態なので ZOOM や Skype のツールでマイクとして「CABLE Output (VB-Audio Virtual Cable)」を選択することで X-T3 のマイク端子に入力したマイクの音声を使うことが出来ます。
OBS で音声フィルタを追加して、音声をワンランクアップさせます。
HD60 Pro の「歯車マーク」→「フィルタ」をクリック。
「音声/映像フィルタ」から「+」をクリックして、「ノイズ抑制」と「ゲイン」を追加します。
ノイズ抑制についてはデフォルト値のままでも問題ないけど、「ゲイン」については音声ミキサーを見つつ適当な数値に設定します。
目安としては、通常の声のボリュームでギリギリ赤に入らないくらいにインジケーターが振れるくらいがちょうどいいです。
今後、ZOOM などを使う時は OBS Studio も起動しておく必要があるけど、音声はかなり高音質になるので環境としては特殊だけど、マイクを PC に直接取り込んで入力レベルが小さくで困っている人はアリだと思います。
2020/05/05 追記
マイク/ヘッドホンに関しては、構成を変更しました。
ウェブ記事で Web会議 には iPhone に付属しているイヤホンが便利という記事を見て、なるほどなーと思ったけど、私は Android ユーザーなので持ってないしなと思ったけど、そう言えば、この前購入した Galaxy Note10+ に付属してなかったっけ? と思って確認してみると、AKG のマイク付きイヤホンが付属してました。
ただ、1点問題なのが自宅で使ってるデスクトップ PC は背面にしか USB-C ポートが付いてなくて、ケースの前面には通常のサイズの USB しか付いてなくて長さが足りない。。
どうしようかなと思って Amazon で探してみると、USB の規格としては策定されてないみたいなんだけど、USB-C → Type A に変換するコネクタが売っていたので試しに買ってみると、普通に使えました。
OS としても「USB Headset」として問題なく認識しました。
ただ、これも入力レベルがちょっと小さめだったので、VideoMicro と同じように OBS に入力して、フィルタを適用して OBS から「CABLE Output」に出力することで音質を保ったまま音量を上げることが出来ました。
フィルタとしては、以下の4つを追加。
- ノイズ抑制
- ゲイン
- ノイズゲート
- コンプレッサー
ゲインはデフォルトの 0.00 dB から 20.00 dB に変更。これで全体的な音量が上がります。
ノイズゲートは「開放閾値」をデフォルトの -26.00 dB から -18.00 dB に変更。VideoMicro だと変更の必要はなかったけど、この AKG のマイクだと -18.00 dB くらいにしとかないと、本来は入力して欲しい声もカットされたため。
ノイズゲートのフィルタを使うと、マウスのクリック音とかをカットすることが出来ます。
コンプレッサーは「出力ゲイン」を 1.00 dB に変更。
2020/07/05追記
音声環境については、ゼンハイザーのUSB接続型のヘッドセットに変えました。
2020/08/09 追記
ヤマハのスピーカーフォンを導入しました。
設置
設置には所有していたミニ三脚の Velbon ULTRA MAXi mini に自由雲台の Velbon QHD-33 を組み合わせてモニター横に設置してみました。
キャプチャー時の CPU 使用率
Elgato のソフト(GameCapture.exe)で録画している時の負荷を確認してみたけど、さすが HW エンコーダーを搭載しているだけあって CPU は全く使ってなかったです。ただメモリは約 1GB とそこそこ使ってる。
総額
私の場合には HDMI キャプチャカードの追加のみで実現出来たけど、構成に必要な要素の総額はこんな感じで、1から全部揃えるのはありえないけど、ミラーレスカメラを持っていれば HDMI キャプチャ環境さえ整えれば実現出来ると思うので、なかなか楽しのでオススメです。
# | 機材 | 購入対象 | 金額(2020/4時点) |
1 | ミラーレスカメラ(X-T3) | 流用 | 約 140,000 円 |
2 | レンズ(XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS) | 流用 | 約 57,000 円 |
3 | マイク(RODE VideoMicro) | 流用 | 約 7,700 円 |
4 | ヘッドホン(オーディオテクニカ ATH-AD500X) | 流用 | 約 9,500 円 |
5 | HDMI キャプチャカード(Elgato HD60 Pro) | 新規購入 | 約 23,400 円 |
6 | HDMI ケーブル(Micro HDMI ⇔ フル HDMI) | 新規購入 | 約 1,000 円 |
7 | ミニ三脚+雲台(Velbon ULTRA MAXi mini+QHD-33) ※ミニ三脚は廃盤なので後継の ULTRA 353mini の金額 | 流用 | 約 8,400 円 |
合計 | 約 247,000 円 |